トップページ > イベント > 西東京スポーツ記事 > 第10回わんぱく相撲・西東京場所開催記念対談

第10回わんぱく相撲・西東京場所開催記念対談

対 談:常盤山親方(元小結 隆三杉)
     西東京青年会議所 理事長 尾藤一朗
聞き手:西東京スポーツ 発行人 新谷秀剛
(平成22年4月28日取材 於 貴乃花部屋)

西東京青年会議所 理事長 尾藤一朗          常盤山親方(元小結 隆三杉)

新谷: 相撲を始めたのはいつ頃ですか?

親方: 小さい頃は空手や柔道をやっていて、中学時、相撲部員が足りないということで最初は助けに行ったという感じで始めました。

尾藤: 当初は格闘技系が好きだったのですか?

親方: 団体でやるよりも小さいときは一対一でやるほうが好きでしたね。

尾藤: 大相撲に入ったきっかけは何ですか?

親方: きっかけは私が中学二年生の頃、初代若乃花の部屋(二子山部屋)の幕下までいった叔父から「俺の甥っ子で体が大きい子がいるんだ」ということで、確か幕下の一人の力士と初めて会い、とんとん拍子で話が進み、気が付いたら入門していました。

第10回わんぱく相撲・西東京場所開催記念対談

新谷: 初めて力士と会った時の印象は?

親方: 14歳でお相撲さんという力士に初めて会いました。その時お相撲さんは大きいなぁと、本当にびっくりしましたね。とにかくでかいなぁと。当初は相撲をそれほど好きだったわけではなかったですけどもね。そのころは柔道をやっていこうと思っていましたが、「柔道では将来飯が食えない」といわれましたし、周りからの薦めもあったので、それが入門の大きな理由だったのかもしれません。

新谷: 相撲を始めるのに本物の力士と会ったことが大きく左右しましたか?

親方: そうですね、大きな力士が髷を結って、着物を着ているのを見て「格好いいなぁ」と思いました。今考えたら、もしその時先に、柔道の日本代表選手に会っていたらそちらへ行っていたかもしれません。(笑)そう考えると、力士と出会ったのが人生の大きな分かれ目でしたね。

尾藤: 格闘技等 すべて出来る人は何でもすぐにできるように思いますが、親方はどうでしたか?

親方: 素質というのは大事かもしれませんが、一番大事なのは努力することです。加えて素質があったらもっといいと思います。

尾藤: 相撲はもともと好きだったのですか?

親方: 小さいときからよく見ていました。でも、柔道を優先的にやっていましたから。

尾藤: 15歳頃は、正直言って私は進学することくらいしか何も考えていなかったのですが、その年齢で部屋に入るという決断はとても勇気のいることですね。

親方: 当時はとても勇気がいりました。この世界はとにかく厳しいと聞いていましたから。入門したのはいいが、やっていけず直ぐに辞めてしまうのでは恥ずかしいということもありましたし。

尾藤: 実際部屋に入って大人の中に交じっていくわけですが、何かわかったことはありますか?

親方: 何事に関しても厳しいということです。上下関係がまず厳しかったですね。稽古が厳しいのは当たり前ですが、私生活に関しては非常に厳しかったです。ですから、自然と丁寧な言葉使いや挨拶の仕方を覚えていきました。この世界に入ると先ず忍耐がつきますね。「我慢」「辛抱」この二つの言葉は欠かせないものでした。

尾藤: 最近の子供は我慢がきかないといいますが、当時の子供たちと、今の子供たちの違いとか何か感じますか?

親方: 今も我慢強い子は多くいますが、我慢強くない子たちが昔より多くなったように感じます。しかし、15、16歳位で入ってくる子でも実際は凄く我慢強い子もいますから、育つ生活環境でも違ってきますね。

尾藤: その時代ではなくて、その子の持っている資質が大切なのかもしれませんね。

親方: ただ、この世界に入ってくる子達は自信があって入ってきます。この世界で「やるぞ!」と思ってきますから、その中で我慢強い子達が残っていければ本当に強くなります。どの世界にもいえることですが、辛抱強く一生懸命努力する人は強くなっています。

尾藤: 「我慢」ということが凄く大切なのですね。

親方: 私たちも相撲界に入ってからずっと言われ続けてきたものですから、「我慢」という言葉は自然と出る言葉ですね。

尾藤: 今の子供たちを見ていて、特徴的に昔の子供たちと変わってきているところは何かありますか?

親方: 我々の時代は外で走り回って遊んでいましたが、今はゲームとか携帯電話等がありますので、友達との付き合い方が少し変化してきていますね。外で遊ぶと、転んだり喧嘩したりとかしながら、いろいろなことを経験したりして、体で覚えることもありますし。そういうところから「忍耐」ということも覚えましたよね。外で走り回ったりして体を鍛えないといけないと、自然に思っていた気がします。

尾藤: 稽古後、力士の方々はプライベートの時間はあるのですか?

親方: もちろんありますが、細かい決まりは部屋によっても違います。稽古後は先ず風呂に入り、髷を結って、ちゃんこ※を食べて、雑用を済ませてから身体を休める。それが終わるとジムへ行ってトレーニングをしたり、他にもいろいろとやることがあります。ですから関取になるまでは、プライベートといっても近所のコンビに行ったり、お茶をのみに行く程度ではないでしょうか。仲間と雑談などをして寝るだけですね。うちの部屋は朝が早く、毎朝4時半に起きて、5時頃から稽古が始まります。だからそんなに出かけるという気になれないんです。私もそうでしたが、いつも早く部屋で寝たいと思っていました。

※「ちゃんこ」=力士が食べる食事はすべて「ちゃんこ」といいます。カレーもハンバーグもすべて「ちゃんこ」です。

新谷: 5時頃稽古されて何時頃に終わるのですか?

親方: 8時半から9時頃には終わります。そう長い時間稽古は出来ません。うちの部屋は、力士の数もまだ少ないですし、待ったなしで稽古をやらせますので。終わってからは、念入りにストレッチをしたり(貴乃花)師匠が一人一人の様子を見ながら、指導しています。で、その後風呂に入る。
また、この世界では殆どの部屋が16時から掃除と決まっています。掃除が終わったらちゃんこを作って、18時頃からちゃんこ(夕食)を食べ、後片付けをして終了、という感じです。門限までがプライベートの時間ですね。

新谷: 門限は何時ですか?

親方: 貴乃花部屋は22時です。部屋によって違いますが。私が入った当時の二子山部屋(現貴乃花部屋)は21時でした。とても厳しかったですよ。21時前から先輩が竹箒持って待っていましたから、1分でも遅れると大変でしたよ。(笑)

第10回わんぱく相撲・西東京場所開催記念対談

新谷: 裏の窓から入るようなことがあったんじゃないですか?

親方: そんなことは出来ませんよ。だから、皆必死になって走って帰っていました。(笑)

尾藤: そういうことからも精神的に鍛えられたんですね。(笑)

親方: だから、沢山稽古をして、早く強くなって、関取(十両)になって自分の個室をもらいたかったですね。関取になったら何も言われません。門限も無くなります。ですから、幕下と十両とでは、まさに天国と地獄のようなものです。(笑)十両にあがったら一人前に給料ももらえて、テレビで皆さんが観るように、化粧まわしをつけて大銀杏を結って、付き人も二人位付きます。力士が入門して見る一番最初の夢は十両になることです。

尾藤: 十両になるには本来どのくらい時間がかかるものですか?また、何人に一人位なのですか?

親方: 私の入門の頃(昭和51年)、新弟子は90人位いて、そのうち7~8人が関取になりました。それでも多い方でしたね。

尾藤: 1割いないのですね。会社経営でしたら100社あったら10社残らないということだから、厳しい世界ですね。

親方: はい、十両になれば一人前の大人ということです。ただ、そこで安心してしまうと良くないんです。安心するとまた幕下に落ちて、そこを行ったり来たりしてしまうケースが多いんです。だからあくまでも十両は過程であると日頃から教えています。十両に上がってからは、今まで以上にガンガン稽古をやらないといけないです。十両になれたから、と気を緩めて遊んでいると落ちるのは本当に早いです。あっという間に下に落ちます。

新谷: これだけ毎日早朝から稽古して、トレーニングして、遊ばないでいたら、十両に上がってついつい気が緩むと怪我をする場合がありそうですね。

尾藤: この世界怪我は付きものだと思いますが、精神的なダメージも同時にあると思いますが、そのような時はどうされているのですか?

親方: 怪我だけは時間が経たないと治らないものですから。怪我をして休場している間に、心が弱くなる時がありますね。「本当に治るのかな?」とか「このまま番付が落ちていって、次の場所本当に相撲がとれるのかな?」とか。どんなに強い人でも不安に必ずなります。ですから、当然みんな怪我はしたくないんですが。

尾藤: そういうときは皆さんどのように克服するのですか?

親方: 精神的に乗り越えないといけません。一からコツコツと体を鍛えて稽古するしかないですね。誰も助けてくれませんから。当時、二子山親方(初代若乃花)から「1日休んだら身体を元に戻すには1週間かかる」と教わりました。

新谷: もし、1場所休場したらどのようになるのですか?

親方: 幕内の7、8枚目くらいだと、十両の真中位まではあっという間に落ちます。休場すると緊張感が違いますから、場所の雰囲気に常に慣れておかないと、その緊張感にのまれてしまいます。そうしないと自分の相撲が取れないんです。

尾藤: 自分の相撲をとるとはどういうことでしょうか?

親方: 稽古場では100%の力を出せますけれど、本場所になると「必ず勝たないといけない」「負けると番付が下がる」「お客さんが何千人観ていて、テレビを入れると何万人にも観られる」などと考えてしまいます。土俵に上がったときの緊張感というのは並大抵ではないです。その緊張感や重圧の中で100%の力を出すのは大変なんです。そこで100%力を出せる人たちというのは、実力は勿論ですが大関、横綱まで上がりますね。

尾藤: 稽古では強いけれど、本番に弱い人は結構いるもんですか?

親方: いますね。稽古場では100%の力を出せるんですが、本場所では50から60%の力しか出せないとか、逆に稽古場では60%くらいしか力がないのに、本場所にいくと100%出せる人(本番に強い人)もいます。
稽古も精神的な面も、コツコツ継続して努力することで、本場所でも「俺はお前よりも稽古しているんだ!」という自信にもつながります。

尾藤: 相撲でいうと対戦相手から「気迫」というか「オーラ」というものは感じるものですか?

親方: 感じますね。若い時、テレビで観ていた力士も大勢いるわけですから「その力士と対戦しているんだなぁ」と考えてしまいます。私も十両から上がったばかりの時に、高見山関とやった時は、仕切りの間に完全に(雰囲気に)のまれてしまいました。それはもう半端じゃない威圧感でした。

新谷: 本場所はそんなに迫力が違うものなんですか?

親方: まったく違いますね。仕切っている間に何かみなぎってくるものを感じますから。

尾藤: 過去にわんぱく相撲・西東京場所の中で、本来は勝ち負けだけではないはずなのですが、「勝つ者が偉い」ではなくて、「いろいろなことを含めて勝っていくことが偉いんだ」ということを諭す機会があって、親としても勉強させられたこともありました。子供だからだと思って接していたのですが、それ以前に人間だったということがあって、勝ちたいからこそそのようなことを言ってしまうのでしょう。子供たちが一生懸命やっているだけでもいいのですが、ただの子供としてだけ扱ってはいけないのだなと勉強させられました。

親方: 勝ち進んでくると応援団も連れて来るでしょうから、子供でもどうしても「勝ちたい!」という気持ちが強くなりますよね。

尾藤: わんぱく相撲を通じでいろいろと我々も勉強させていただいています。また、このわんぱく相撲がなかったら、このように親方ともお会いできませんでしたし本当に感謝しています。
また今度(5月23日)西東京青年会議所主催でわんぱく相撲を開催します。このわんぱく相撲を通じて子供たちに何を学んでもらいたいと考えますか?

親方: 勝ち負けも大切ですが、子供たちには礼儀作法をしっかりと学んで欲しいですね。相撲は『礼に始まり礼に終わる』ものなので、勝っても負けてもきちんと礼をするなど、土俵での作法をしっかりとやってもらいたいですね。これが相撲で一番大切なことですから。

尾藤: 道を追求したものを子供たちにやらせるといいと聞いたことがあるのですが・・・

親方: 追求するというのは、一つのことを集中して、そのことだけを考え、それに向かって一所懸命進むということ。それが大切なんだと思います。

尾藤: 昔わんぱく相撲の時に、仕切り線から半分に土俵を切って、相手の土俵で取りなさいと教わりましたが・・・

親方: 相手の陣地で相撲をとるということですね。自分の陣地にこられるということは、すでに立会いで押されているということですから、立会いで相手をふっ飛ばして相手の陣地で相撲を取ることは、自分が攻めているということですから、とても重要なことです。

尾藤: 親方は指導するにあたりどのようなことに気をつけていますか?

親方: 「身に付く」稽古をさせるという事ですね、強くなるための。ただ稽古をやらせて終わればいい、というようなものでは駄目です。(貴乃花)師匠もいろいろと新しい方法を取り入れていますから我々も参考になります。目先の相撲ではなく、その力士の2~3年先のことを考えて指導しています。相撲は前に出ることが基本ですから、その辺を重視して教えています。

新谷: 確かに私の周りにもただ時間を費やして一日のメニューを終わらせるだけの指導者もいますね。

親方: そうですね、ただこなすだけでは駄目なんです。同じ1時間の練習でも力を抜いても1時間は1時間ですから。30分だけでもしっかり中身の濃い稽古をすることです。

尾藤: 相撲の稽古というのは大体内容は決まっているものなんでしょうか?特別な稽古とかはあるのでしょうか?

親方: 身体を鍛える基礎はまずは「しこ」です。そして「てっぽう」と「すり足」です。この3つが何百年も前からある身体を鍛える基礎です。それ以外にプラスして最近はダンベルをやったりとか腕立ても一日200回くらい取り入れたりしています。部屋によっていろいろと工夫して取組んでいると思います。

新谷: 相撲のとりかたですが、私たちからみると先ず勢いよく当たってまっすぐ押して、粘り強い相撲は観ていて気持ちいい相撲だと思います。親方は観られる相撲としてはどのような相撲がいいと思いますか?

親方: お客さんの好みですからね、どれがいいとかは一概にはいえませんね。

尾藤: 外国人力士は、すぐに相撲界に馴染めるものなのですか?

親方: 馴染むしかないんですよね。日本人の中にぽつんと一人だけいれば馴染む以外にはないですよね。自然と日本語も覚えますしね。

新谷: 部屋の力士は野球でいうトレードとか部屋替えとかはあるのですか?

親方: それは出来ません。一度お世話になった部屋は一生お世話になることになります。一生他の部屋へいけません。

※部屋の統合や何らかの理由で部屋がなくなった場合は例外です。

新谷: 他の国の文化が入ってくるということはあるのでしょうか?

親方: 大相撲は日本の国技ですから、他の国の文化が入るということはありません。

尾藤: わんぱく相撲に参加する子供たちに一言いただけますか。

親方: 先ほど言いましたが、土俵での礼儀作法をしっかりやって、自分の力を出し切った相撲をとって下さい。悔いが残らないよう一所懸命やってほしいと思います。

新谷: 最後に、スポーツをしている子供たちの中には怪我をした子供もいると思いますが、そういう子供たちにもアドバイスをいただけませんか?

親方: 怪我をして直ぐによくならない場合、まずはしっかり休むということです。その間、例えば足を怪我したのなら上半身を鍛える。怪我が完治したら「怪我をする以前よりも体の状態が良くなるんだ!」と信じ、今まで以上に下半身を鍛えればいい。自分に負けないで怪我に向き合って欲しいですね。
保護者の方々には、子供たちに是非勇気付ける声をかけていただきたいですね。そうすると怪我をした本人も頑張れると思いますし、何より安心すると思います。

新谷: 今日は常盤山親方、尾藤理事長お忙しいところ貴重な時間を有難うございました。

 
 
 
【編集後記】

常盤山親方とお会いする前は相撲界のことも知らなかったので、緊張してお会いしましたが、とても人当たりのいい明るい親方でした。親方はとにかく弟子のことを本当によく考えていて、厳しく鍛えて早く強くして上位へ上がれるよう日々指導にあたっていらっしゃいました。プロですから怪我の無いように、早く強くなり稼げるようにと。人柄からか厳しさの中にも温かみがすごく感じられました。きっと貴乃花部屋全体がそういう雰囲気なのでしょう。子供たちやご父兄にはこの対談を読んでいただいて少しでも参考にしていただければと思います。ご多忙の中、取材協力をしていただいた貴乃花部屋の方々に感謝いたします。(新谷)

イベント情報

イベント名 第10回わんぱく相撲・西東京場所開催記念対談

▲このページの先頭に戻る